中小企業診断士の1次試験は効率の良い勉強さえすれば、独学ストレート合格も可能です。
しかし、世の中には効率の悪い勉強法が出回っています。
① 初学はテキストを隅々まで読み込むことから始める
② 分からない箇所は一つずつ調べる
③ 過去問を解いて正解した問題には〇を、不正解には×を書き込む。
これらは全て効率の悪い勉強法です。
「なぜ効率が悪いのか?」について気になる方は、是非とも前回のブログも合わせてご覧下さい。
今回は、前回に続いて【効率編】のPart 2をご紹介したいと思います。
なお、効率編は全3パートとなり、本Part 2は最も効率的なテクニックをご紹介します。
▼ 目次
段階的なレベルアップが効率を大きく左右する
「まずは過去問に挑戦してみる」
「過去問が最良のテキストである」
このようなアドバイスを、1次対策ではよく目にします。
私もこれらの言葉を信じ、過去問から勉強を始めました。
しかし、これらの勉強法では山勘での「当たった」「外れた」を繰り返すだけで、肝心の内容が頭に入ってきません。
「このままではテストで点が取れるようにならない」と感じ、
やむを得ず、テキスト学習からの再スタートを切ることにしました。
この経験から学んだことは、『ゴールを見据えた上で段階的なレベルアップ図ること』の重要性です。
診断士の1次試験では、基礎問題は3割しか出題されません。
つまり、7割は勉強した人でも悩んでしまう応用問題です。基礎知識がなければ解説を読んでも理解できません。
そのため、診断士試験において、いきなり過去問に取り組むのは、効率の悪い勉強法と言わざるを得ません。
今回は、そんななんとなく勉強した気になれる勉強法ではなく、
私の経験に基づく、確実に得点アップに結び付く勉強法を順番にご紹介します。
診断士の勉強には3つの階段がある
試験問題がスラスラと解けるようになるまでには、3つのステップがあります。
初めて勉強する教科は、大部分が初見なので第0段の『知らない』に位置します。
ここからテキスト学習を進めて、『見た事がある』へのステップアップを図ります。
これが第1ステップです。
次に、過去問と向き合うことで試験問題の傾向を掴み、『知っている』へとステップアップを図ります。
これが第2ステップです。
この第2段階では、まだ『知っているつもり』の知識も多いので、試験で問われやすいポイントをしっかりと理解することで安定して得点が取れる『解ける』状態を目指します。
これが最終ステージの第3ステップです。
企業経営理論の『PPM』で例えると
これらの各ステップをより感覚的に分かるように、企業経営理論で頻出の『PPM』に当てはめて、ご説明したいと思います。
例えば、PPMの問題で、縦軸と横軸の軸名が問われたとします。
この場合、知識レベルは4つの段階に区分できます。
第0段:「PPMってなんだっけ?」
第1段:「PPMって、金のなる木や負け犬のやつでしょ?けど、軸名までは気にしていなかった」
第2段:「縦軸は市場の大きさで、横軸がキャッシュフローだっけ?」
第3段:「縦軸は市場の成長率、横軸は相対的市場シェア比率でしょ」
本試験で安定して得点が取れるのは、第3段まで知識を高めた人です。
第0~2段の人は、合否を分ける重要な問題を取りこぼしてしまう可能性があります。
これらの段階的なステップアップが、今回の内容の全体像となります。
続いては、各ステップの効率的な登り方をご紹介します。
【ステップ1】テキストの内容をざっくりと知る
真面目な人ほどハマりやすい落とし穴が、いきなり完璧を目指す勉強法です。
テキストを隅々まで読み込み、重要なポイントにはマーカーを引き、分からない単語は一つひとつ意味を調べる。これらの学習方法は、中小企業診断士の試験対策としては相性が悪い勉強法です。
診断士試験は試験範囲が広く、忘れてしまう内容が多いため、忘れることを前提に対策を取ることが重要です。
そのため、このステップのキーワードは『じっくり丁寧ではなく、素早く何度も』です。
最初はテキストに書かれている内容の全てが重要に見えてしまいます。
「どういったテーマが重要なのか?」「どんな問題が出題されやすいのか?」
を把握できていないからです。
そのため、最初の学習ではテキストをザックリと眺めることから始めます。
出題頻度が高い重要な内容は、ページ数を割いて図表やイラストも入れて詳しく解説している場合が多いです。
まずは、そういったページ数が多く割り当てられている内容や、図表、グラフ、太文字などのテキストの押しポイントから『見た事がある』状態にしていきます。
文字ばかりの内容、一回読んでもスッと入ってこない内容は、
深入りせずに「また今度、理解すればいいや」
と、読み飛ばしていきます。
決して、他のテキストに手を出したり、インターネットで調べたりはしません。
何事も一回目が一番負担が大きいものです。
ストレスを貯めすぎないように勉強するのも学習のコツです。
そのため、1回で覚えようとはせず、3回は読み返すことを前提に
「ふ~ん、こんな感じなんだな」
と気楽にテキストを読み進めます。
ちなみに、ラインマーカーを引くのは、3回目までは我慢しましょう。
最初は、初めて知る内容が多く、あれもこれもとマーカーを引きたくなるからです。
後から消せるマーカーもありますが、消す作業は意外と面倒です。
マーカーを引くのは、
◇ 何回読んでも覚えられない箇所
◇ ケアレスミスをしてしまいがちな箇所
◇ 試験前に見直すべき箇所
に限定することで、効率と効果を最大限に高ます。
そして、4回目以降は、
「この内容は仕事でも使えるかも」「この理論はこの前、上司が話していた内容かも」
と、引っ掛かりがある内容から学習していきます。
そうやって、興味のある部分から知識の幅を広げていき、『見た事がある』状態を作っていきます。
それがステップ1のポイントです。
ステップ1のゴールは、過去問の解説が理解できるレベルです。
「ある程度、見た」と感じたら、次のステップに進みましょう。
この第1ステップをどれだけ素早く駆け上がれるかが、勉強時間の短縮のカギとなります。
【ステップ2】試験の傾向を先読みする
次が『見たことがある』から『知っている』へのステップです。
多くの人は、このステップ2の『知っている』を飛ばして、いきなりステップ3の『解ける』を目指そうとします。
「今の実力を試してみたい」「試験問題に挑戦してみたい」
その気持ちも十分に分かります。
しかし、効率を重視するのであれば、この段階でいきなり問題集を解く勉強はオススメしません。
次の3つの弊害を伴うからです。
3つの弊害
ムダ:基礎知識がない状態では余計なところで悩んでしまう
ムリ:解けない現実にストレスを感じてしまう
ムラ:山勘で解いても実力向上にはつながらない
「問題が解けない」「意味が分からない」といった状態は、かなりのストレスとなります。このストレス状態が続いてしまうと、モチベーションが続かず、受験自体がイヤになりかねません。
そのため、初回は「解けなくて当たり前」といった軽い気持ちで
分からない箇所はすぐに答えを参照して、過去問に慣れることを重視します。
この段階では、
「どういったレベル感の問題が出題されるのか?」
「テキストをどのくらいの深さまで読み込む必要があるのか」
といった感覚を掴めれば十分です。
「過去問を繰り返し解いて実力が付くのか?」
「すぐに解答を見てしまったら、正解の番号だけを覚えてしまうのではないか?」
と心配される方がいらっしゃるかもしれません。しかし、心配無用です。
詳しい内容は次のステップ3で説明しますが、
この段階で正答順を多少覚えてしまっても、最終的には重要ポイントをしっかりと抑えられるようになります。
むしろ正答順などのムダな知識は、他の科目を勉強をしている間に忘れてしまっていることがほとんどです。
『考える作業』と『傾向を把握する作業』を分離することで、
「なるほど、こんな感じで試験問題は出題されるんだな」と、
『知っている』状態に素早く駆け上がります。
ちなみに、過去問題集は年度別ではなく、分野別に編集されているものがオススメです。
私のオススメは同友館の『過去問完全マスターシリーズ』です。
【オススメ理由】
- 過去10年分の問題が収録されている
- 問題と解説がセットになっていて、答え合わせが1問ごとにできる
- 頻出頻度ごとにランク分けされている
年度別の問題集は、本試験を意識した模擬演習や時間配分の把握には向いていますが、知識の定着には不向きです。
一方、分野別の『過去問完全マスターシリーズ』は、重要論点別に編集されているため、第2のテキストとしても活用しやすくオススメです。
過去問題集は実力を計るためではなく、実力を付けるためのアイテムとして活用します。
そうすることで、早い段階で「どんな知識を」「どのレベルで」といった試験の傾向を把握することができます。
以上がステップ2のオススメ勉強法です。
次が、いよいよ得点アップに繋がるステップ 3です。
本記事は少し長くなりましたので、
続きは『Part 2』で!