中小企業診断士の1次試験は、毎年20%前後の合格率で推移しています。
5人に1人しか突破できない狭き門ですが、
1次試験はコツさえ把握すれば独学でも十分に合格できる試験です。
本シリーズでは、そんな1次突破のコツを
『戦略・効率・勉強時間』の3つに分けてご紹介したいと思います。
【戦略】どれだけ効率的な勉強を行っても、ルートが間違っていればゴールにはたどり着けません
【効率】どれだけ勉強を頑張っても、効率が悪ければ成果にはつながりません
【勉強時間】ルートと効率の最適化を行っても、最低限の勉強は必要です
その中でも今回は、最も重要な『戦略』に焦点を絞って、
1次突破のコツをご紹介したいと思います。
▼ 目次
傾向を知り、対策を知れば、1次試験は危うからず
診断士試験は7科目すべてにおいて、60点以上を目指す試験ではありません。
39点以下を回避しつつ、合計で420点以上を目指す試験です。
「同じ意味では?」と思った人は要注意です。
戦略を誤る可能性があります。
診断士試験は科目ごとの難易度が大きく異なります。
毎年、『極端に難しい科目』と『比較的簡単な科目』がそれぞれ数科目ずつ、ローテーションで出題されています。
次の表に、過去10年分の科目合格率(1次試験には不合格になったものの、個々の科目で60点以上取れた人の割合)をまとめました。
科目合格率が10%を下回る科目を赤字、合格率が25%を上回る科目を青字で記載しています。
より感覚的に分かるように、科目ごとの平均点も算出しました。
なお、各科目の平均点は公表されていないため、筆者が大手予備校のデータから導き出した値となります。
上の表で、平均点が60%を超えている青字の科目は、半数以上の受験生が合格したサービス科目となります。
一方、赤字は難関科目になります。特に、2018年の経営法務は平均点が39%であり、半数以上が足切りとなる難易度でした。
そのため、得点調整が入り、一律8点アップとなっています。
マーク式では、適当に答えても20~25%は正解するため、平均点が50%を下回るということは、自力で解けた問題が3問に1問もない、ということです。
では、2019年の難易度はどうなると予想されるか?
2019年度の難易度予測
過去の傾向から、2019年の科目ごとの難易度を予想した結果が次の通りです。
2019年度の『経営法務』は、次の2点から大幅に易化すると予想されます。
理由① 3年連続で難しかったため
理由② 2018年に得点調整+8点という失態を犯したため
これは2017年の『情報システム』と似た傾向です。
一方、2019年度の『財務・会計』は、難化すると予想されます。
理由① 2015~2017年は難易度が低く、2018年に難易度が一気に上がったため
理由② 1年周期での極端な難易度変化はあまり例がないため
このように過去の傾向を分析することで、次年度はどのような問題が出題されるだろうと予想を立てることができます。
ちなみに、私が受けた2017年は『情報システム』と『経営法務』の難易度を見事的中させ、合格に繋げることができました。
全科目で60点以上を目指すのは、合格を目指すより何倍も難易度が高く、必要以上に時間がかかります。
それならば、2次対策に時間をかける方が得策です。
つまり、難関科目は足切り回避の40~50点で妥協し、サービス科目で70点以上を目指す。
これが「合格プランを戦略的に考える」ということです。
次は具体的な勉強方法を見てみましょう。
問題ごとの難易度はどうなっている?
1次試験の問題は、大きく分けると4種類で構成されています。
① みんな解ける問題 (正答率70%以上)
② 合否を分ける問題 (正答率50~70%)
③ 多くが解けない問題 (正答率25~50%)
④ 誰も解けない問題 (正答率25%以下)
なぜ、このような問題構成になっているのでしょうか?
それは合格率20%の試験問題を安定的に作るためです。
国家試験の問題作成者は、重責を背負っています。
試験内容が簡単すぎると、合格者が一気に増え、資格の質が損なわれます。
一方、難しすぎると2次受験生が減り、受験料を確保できなくなるため、得点調整で救済措置を取らざるを得なくなります。
どちらにせよ、極端なパターンは問題作成者の権威を損なってしまいます。
そこで、『皆が解ける問題』と『誰も解けない問題』を約30%ずつ出題することで点数のバラつきを抑え、残りの約40%を絶妙な難易度にすることで、合格率20%の問題を安定的に作成しています。
つまり、合否は絶妙な難易度の数問にかかっているのです。
ちなみに、難易度が高かった2018年度の企業経営理論においても、
①みんな解ける問題(難易度『易』)と、②合否を左右する問題(難易度『並』)を確実に正解できれば、あとはエンピツを転がすだけで合格点が取れる問題構成となっていました。
2017年度と2018年度の『科目ごとの難易度比率』を棒グラフにしたものが次の図です。
一番右の「7科目全体」をみると、2017年度・2018年度ともに
『易』と『並』を合わせると、合格ラインの65%を占めています。
中小企業診断士の1次試験は、5人に1人しか受からない試験であるため、
「難しい問題も解けないと受からない」
と思い込みがあるかもしれない。
しかし、実際は、
①『易』で9割
②『並』で5割
③『難』で1割
の問題が分かれば、合格ラインに達します。
つまり、1次試験の対策は
「易と並の問題を確実に解けるようにする」ということです。
ただし、こういった話をすると必ず聞かれる質問が、
「試験当日は、問題ごとの難易度が分からないと思いますが、4種類の難易度が区別できるようにならないといけないのでしょうか?」
といったものです。
結論から言いますと、
難易度の区分ができるようになれば合格の安定度は格段に上がりますが、そのレベルまで達する必要は全くありません。
それならば、2次試験の勉強に時間を費やした方がマシです。
1次試験は、診断士への通過点に過ぎません。
満点であろうが、ギリギリであろうと、合格の価値は同じです。
ですから、多くの人が解けるであろう問題を解けるようになれば、難易度など見極められなくても十分です。
努力家ほどハマる残念な努力とは?
これまで1次試験の特徴についてご紹介してきました。
最後に、最も重要な内容をご紹介して、戦略編を締めくくりたいと思います。
先ほど「多くの人が解けるであろう問題が重要だ」と説明しましたが、
ここで、「なるほど、基礎問題を中心に勉強すれば良いのか」と解釈して、テキストの中心の勉強を行う人がいます。
しかし、それは報われにくい残念な努力です。
「学生時代の試験」と「診断士の試験」とでは、テキストのポジショニングが違います。
学生時代の期末テストでは、教師が重要ポイントを教科書から選考し試験問題が作成されていました。
そのため、見たことがない問題が出題されることはマレだったはずです。
しかし、診断士試験は逆です。
受験校の先生が、過去の試験から「この内容は重要だ」「次はこれが出題される可能性が高い」といった内容を分析して、テキストが構成されています。
つまり、極端なことを言えば、
選んだテキストがハズレだったら、テキストの内容を完璧に覚えても合格点を取れない
といったことも、診断士試験では起こりえます。
(大手受験校のテキストならそこまで酷いことはありませんが、当たり外れはあるようです)
だからと言って、リスク分散のために色んなテキストに手を出せば、それこそ時間がいくらあっても足りません。
「いっぱい勉強したのに、報われない…」
そんな残念な結果にならないためには、どうしたら良いのでしょうか?
最も効果のある解決策は、過去問を中心に『出題頻度が高い問題』を強化することです。
そのため
テキストは、分厚さより分かりやすさを重視し、
過去問集は、年度別より出題頻度別にまとめられているものをオススメします。
「自分だけが知らない問題が出題されたらイヤだ…」
「予備校ではいろんな知識を教えてもらっているのではないだろうか?」
と心配になり、ついつい勉強範囲を広げたくなります。
しかし、その欲求をグッとこらえて『出題頻度が高い問題』を集中的に取り組むことが独学合格への近道となります。
繰り返しになりますが、重要なのは「多くの人が解けるであろう問題を確実に解けるようにする」ことです。
1次試験は出題範囲が広いからこそ、論点を絞り戦略的に学習することが重要です。
戦略編のまとめ
今回は、1次突破の『3つのコツ』のうち、【戦略編】について詳しくご紹介しました。
- 全科目60点以上ではなく、合計420点以上を目指す
- 難化科目は確実に40点を死守する
- 2019年は『財務・会計』が難しいと予想される
- 合否は『並』の問題にかかっている
- 過去問を中心に『出題頻度が高い問題』を勉強をする
残り『2つのコツ』についても、是非とも合わせてご覧ください。
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現在、作成中です。もうしばらくお待ちください。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。