「10分ぐらい遅れてしまい、申し訳ございませんでした」
「10分も遅れてしまい、申し訳ございませんでした」
両者の差は、ほんのわずかですが、受ける印象は大きく異なります。
前者の謝罪では、「10分ぐらい(たいしたことないでしょ)」といった価値観を無理やり押し付けられたように感じます。
これでは、せっかくの謝罪も「時間を軽視している」という印象しか与えません。
また、「夜も眠れません」「食べ物がろくにノドを通りません」「涙が止まりません」といった言葉を使う人もいます。
言った本人に深い意味がなかったとしても、言われた側には重たい言葉です。
「こんな可哀そうな私を許さないつもり?あなたに良心はないの?」と責められているように感じるからです。
あなたも、このような残念な謝罪に心当たりはありませんか?
損する人は、「こう言ったら、相手はどう感じるだろう?」といった相手を思いやる想像力が欠けています。
あなたの考えたその謝罪で、相手はなぜ許そうと思うのか?
そこまで考えが及んでいない謝罪に、未来はありません。
テレビでの謝罪会見でも、よくこの項目が抜け落ちています。
ですから、頭を下げたにも関わらず炎上してしまう、という残念な結末が後を絶たないのです。
「何に対して謝るのか?」を理解には、相手が「何に怒っているのか?」を知る必要があります。
そして、それを知るためには、相手の “第一感情” を想像することです。
“第一感情” とは、怒りの前に現れる感情のことです。
怒りは “第二感情”と呼ばれます。
たとえば、あなたが彼女(彼氏)との待ち合わせに、10分遅れたとします。
恋人はあなたの顔を見るやいなや「なんで遅刻してきたの?」と、怒りの火玉を投げつけてきます。
こちらの事情を聞こうともせずに、一方的に責めてくる相手に、あなたもイラッとすることでしょう。
それでも、込みあがる感情をグッと抑え、「遅れてごめん。電車の人身事故に巻き込まれてしまったんだよ」と謝罪します。
しかし、相手の怒りは収まる気配を見せません。
「謝ったらそれで良いと思っているんでしょ?」と、返される始末です。
挙句の果てには、「前も遅刻してきたよね?」と過去のミスまで持ち出されてしまいます。
ついに、あなたも堪忍袋の緒が切れ、「人身事故なんて防ぎようがなくない?なんで俺ばかり責められないといけないワケ?」と逆襲し、終わりの見えないドロ沼へと足を踏み入れていってしまいます。
この話のどこに、“謝罪しても許してもらえない” 原因があったのでしょうか?
恋人に謝罪を受け入れる器量がなかったから?
ではありません。
恋人はあなたを待っていた間、「約束を忘れているのかもしれない」「何かの事件に巻き込まれたのかもしれない」といった 不安 にかられていたワケです。
しかし、そんな思いとは裏腹に、あなたはケロッとした顔で現れた。
そのギャップに失望し、怒りの感情が生まれたのです。
人が怒りをあらわにする前には、『不安・心配・悲しみ・失望』といった “第一感情” が存在します。
その “第一感情” を理解しないことには、相手の許しは得られません。
あなたが待たせた10分間、相手は何を思い、どう過ごしたのでしょうか?
photo by kaizen.nguyễn (改変 gatag.net)
たとえ、遅刻に正当な理由があったとしても、相手を待たせたのは事実です。
待たされた方は、10分待たされたことではなく、「大切にされていない」という振る舞いに悲しく思っています。
その気持ちをないがしろにして、自分の都合ばかりを主張しても許しは得られません。
「謝ったのにあいつはまだ怒っている」
「あれで謝ったつもり?」
そんなスレ違いを起こさないためにも、
まずは、相手の “第一感情” を想像してみましょう。
これを意識するだけでも、人間関係は大きく変わるはずです。
損する人は、相手の感情を軽んじて、自分の正当性ばかり訴えます。
損しない人は、想像力を働かせて、相手の感情をケアします。
【損する謝罪】
「ごめんなさい……でも10分遅れたくらいで、そんなに泣かなくてもいいんじゃない?」
【得する謝罪】
「涙が出るほど心配してくれてたんだね…ごめんなさい」
第三章 簡単に相手の心を読む方法 (本記事)
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