ソント君
「探偵さん!探偵さん!ちょっと教えてほしいことがあるんだけど……探偵さんってば」
photo by Philippe Put
探偵
「いきなり、なんだい?ソント君よ」
ソント君
「今日ね、学校で分数の足し算を習ったんだけど、分からない問題があるから教えてよ」
探偵
「おぉ~いいとも!私は算数や数学が得意でね!何が分からないんだい?」
ソント君
「それがね、学校の先生に『分数の足し算は、分母をそろえてから計算しなさい』って、
教わったんだけど、この問題は計算が合わないんだよ」
【問題】
2つの水槽があります。
水槽Aには、2匹の金魚がいます。そのうち1匹が赤い金魚です。
水槽Bには、3匹の金魚がいます。そのうち1匹が赤い金魚です。
これを、大きな水槽Cに合わせると
赤い金魚は、全体の何匹になるでしょうか?
ソント君
「この問題の答えは2/5なんだけど、
1/2+1/3 が 2/5 って、おかしいよね?
どこで計算間違いしているのかな?」
探偵
「なるほど!要するにソント君は分数の2つ目の壁にぶつかったというワケだ」
ソント君
「2つ目のカベ?」
探偵
「そう!2つ目の壁。でも、それは良いことだよ。
1つ目の壁をクリアしたからこそ、2つ目の壁にぶつかったとも言えるからね」
ソント君
「ん?どういうこと?ちゃんと教えてよ」
探偵
「分数ってのはね、実は3種類あるんだ。
今回は、そのうちの1つにつまずいたってワケ」
ソント君
「えっ?待って!待って!分数って3つもあるの?」
探偵
「乱暴な言い方をすればね」
ソント君
「そんな話、聞いたことないよ?」
探偵
「ま~明確に区切られているワケではなないからね。
みんな、何となくで使い分けているのさ」
ソント君
「何となく……」
探偵
「そう何となく。その “何となく” をイメージできない人が、算数や数学嫌いになってしまうんだよ」
ソント君
「えっ……じゃ……ボクも……」
探偵
「ま~ま~そう気を落とさずに。ちゃんと説明してあげるからさ」
ソント君
「それなら、安心だね。
でも、なんで3種類もあるの?もっとシンプルにすればいいじゃん」
探偵
「その通りだね。でもね、これには分数の起源が関係しているんだ」
ソント君
「というと?」
探偵
「簡単に言うと、『古代ギリシア』と『エジプト』でそれぞれ独自の分数が発展していったんだけど、ある時、その2つの分数が出会い、『君のところの分数は面白いね』『いや、君のところこそ面白い』という感じで、2つの分数がミックスされて、今の分数になったんだよ
(実際にはドンパチあったんだけど、そこは今回は置いておいて)」
ソント君
「ん?それだと2種類じゃないの?」
探偵
「起源はね。そこから、また分数が発展して、3つ目の分数が誕生したんだよ」
ソント君
「そんなに分数ってポンポンと生まれるものなの?」
探偵
「分数って便利な考え方だからね。色んなテクニックが詰め込まれたのさ。
ま~『3つに分けて考えると、理解しやすい』って思っていれば間違いないよ」
ソント君
「なるほどね。ようするに、釣りにも海釣りや川釣りがあるように、分数にもいろんな分数があるってことだね」
探偵
「えっ、あ~、ま~、う~ん、そういうことだね」
ソント君
「で、その3つの分数って、どうちがうの?」
探偵
「そうだったね。それを説明しないとね。
それじゃ、それぞれの分数の特徴を言うから、ちゃんとメモしてね」
ソント君
「φ(`д´)メモメモ……」
探偵
「1つ目は、1より小さい数を分割するための分数
2つ目は、2つの対象を比で表すための分数
3つ目は、単位の異なる数を組み合わせるための分数」
ソント君
「……」
探偵
「全然メモしてないじゃん」
ソント君
「だって、意味がまったく分からないんだもん」
探偵
「じゃ、もっと簡単に言うと、
- 個数が関係する分数
- パーセントが関係する分数
- 単位が関係する分数」
ソント君
「ん~」
探偵
「じゃ、さらにもっと簡単に言うと、
- ケーキを分けるための分数
- 食塩水を薄めるための分数
- 車の速さを議論するための分数
これだとどう?」
ソント君
「う~ん……何とな~く分かるような、分からないような……」
探偵
「最初はそれでOK!まずは、その “何となく” を掴むことが重要だからね。
じゃ、それぞれの分数を
- ケーキの分数
- 食塩水の分数
- 車の分数
と、するね」
ソント君
「うん。その方が分かりやすそう」
探偵
「最初はケーキの分数について説明するね。
これは、学校で最初に習う分数で、最も一般的な分数だよ。
1より小さい数を分けたり、足し合わせたりするときによく使うんだ。
例えば、次のような感じだね」
ソント君
「これ、前から思っていたんだけどさ。
全部、小数点で表現すればよかったんじゃないの?
0.5個みたいにさ。それなら、計算が簡単だったのに」
探偵
「そういう考え方もアリだね。
でも、0.125個のケーキって言うより、1/8個のケーキって言った方が、
大きさをイメージしやすくないかい?」
ソント君
「たしかに!」
探偵
「不便な部分もあれば、便利な部分もある。
それが分数なんだよ」
ソント君
「使い方しだいということだね」
探偵
「そういうこと!
じゃ、次は食塩水の分数に行こうか」
ソント君
「別名を “割合の分数” だね」
探偵
「さすが、ソント君。飲み込みが早いね。
実は、さっきの赤い金魚の問題もこれに分類されるんだよ」
ソント君
「えっ?そうだったの?」
探偵
「食塩水の分数は、同じ分数でもケーキの分数とは大きく異なるんだ」
ソント君
「ふ~ん。さっきのケーキの分数と、いったいどこが違うの?」
探偵
「じゃ問題だけど、
5%の食塩水に5%の食塩水を混ぜると何%の食塩水になる?」
ソント君
「10%……じゃなくて、5%!」
探偵
「正解!危なかったね」
ソント君
「最初は、単純に足し算しちゃったんだけど、
食塩水をコップに二回に分けてそそいだ場面を想像したんだ。
最初に半分ほどそそいでから、後でもう半分そそぐって状況をね。
同じ食塩水を注いでいるのに、それで濃度が濃くなったら『おかしい』ってきづいたんだ」
探偵
「その想像力は大したもんだ。
ソント君が言うように、食塩水の分数では、5%+5%が5%になるんだ。
つまり、5/100+5/100=5/100になるんだ。
これが、ケーキの分数と決定的に違うポイントだね」
ソント君
「たしかに!ケーキの分数だと、5%+5%=10%になるもんね」
探偵
「そういうこと!
じゃ次の問題に行くよ!
3%の食塩水に7%の食塩水を混ぜたら、何%の食塩水ができる?」
ソント君
「もうひっかからないよ!5%!」
探偵
「なるほど!
じゃ、海は塩分濃度がだいたい3%くらいなんだけど、
その海に、塩分濃度7%の食塩水をコップ一杯分加えたら?
海の塩分濃度は5%になるんだね?」
ソント君
「えっ?」
探偵
「これが、食塩水の分数における本当の引っかけなのさ」
ソント君
「……」
探偵
「なんで、3%と7%を足し合わせて、5%にならないのか?って顔だね」
ソント君
「そ、そんなことないもん。ちょっと考えてただけだもん。
でもさ、コップに3%の食塩水と7%の食塩水を入れたら、5%の食塩水ができるんじゃないの?」
探偵
「もちろん、できるよ。
ただし、それは同じ量の食塩水を入れたとき、だけなんだ」
ソント君
「同じ量のときだけ?」
探偵
「そう!その限られた条件でしか成り立たない、どちらかと言えば例外パターンなんだよ」
ソント君
「えっ?例外なの?分数ってやっぱりむずかしい……」
探偵
「そんなに難しく考える必要はないよ。
割合の分数で重要なのは、『何%と何%を足し合わせるのか?』ではなく、
『足し合わせた後に、どんな状態になるのか?』なんだよ」
ソント君
「どんな状態になるか?」
探偵
「そう!だから、割合の分数では、分数の分母を揃えての計算が通用しないんだ。
割合を求めるためには、分母と分子で別々に考える必要があるんだよ」
ソント君
「ん?ん?どういうこと?」
探偵
「最初の金魚の問題で、説明するね。
あの問題を解くには、
水槽Cを見て
赤い金魚の数を、
赤と黒の金魚の数で割る
という計算をしなければいけない。
正直、水槽Aにいる赤い金魚の割合なんてどうでも良いんだ。
重要なのは、水槽Cにいる金魚の数だけなんだよ。
ここが、ケーキの分数とは大きく異なる点だね」
ソント君
「う~ん……まだよく分からないよ……」
探偵
「じゃ、視野をもっと大きくして考えてみよう。
例えば、世界の男女比は1対1で、男性が50%、女性が50%だけど、
そこに新しく男の子が1人誕生したからって、50%が大きく変わることはないだろ?」
ソント君
「そりゃそうでしょ。
1人くらい、誤差みたいなもんだからね」
探偵
「よし、この感覚は分かるね」
ソント君
「もちろん!」
探偵
「じゃ、子供が男の子1人と女の子1人の家に、
新たに男の子が誕生したら、その家での男女比はどうなる?」
ソント君
「そりゃ、大きく変わるでしょ。
『1/2』から『2/3』に変わるもん」
探偵
「その通り!でもね、
この二つはどちらも、50%に100%を足しているんだよ。
でも、出てくる答えは全然違う」
ソント君
「ほんとうだ!」
探偵
「これが、『足し合わせた後に、どんな状態になるのか?が重要』と言うことの意味なのさ。
だから、割合の分数では、分母と分子で別々に考える必要があるんだよ」
ソント君
「なるほどね!そういうことだったんだ!
ボクは今の今まで『分数の足し算は全て分母を揃えなければいけない』と思っていたよ。
金魚の問題では、1/2+1/3と考えること自体、まちがっていたんだね」
探偵
「そういうこと!学校の授業では、分数の分母を揃える方法は教えてくれる。
だけど、『なぜ分母を揃えないといけないのか?』その理由は教えてくれない。
だから、ソント君が金魚の問題に引っかかってしまったのは無理もないんだよ」
ソント君
「なるほど!なるほど!そういうことだっただね。
“割合の分数” は、『混ぜた後の状態を考えて計算する』っと。
探偵さん、ちゃんとメモしておいたよ」
探偵
「ソント君も、これで一つ成長したね」
ソント君
「ほんとうに?ちゃんと成長したかな?」
探偵
「成長したとも!算数は疑問に思うことが大切なのさ。
ソント君の好きな釣りで例えると、
魚を貰った生徒は、その魚を簡単に食べることができる。
でもね、その生徒はその魚しか食べられない。
一方で、魚の釣り方を教えてもらった生徒は、
どんな魚も食べることができる」
ソント君
「つまり?」
探偵
「つまり、本質を知った者は強いってことさ!」
ソント君
「なるほどね!じゃ、3つ目の車の分数も教えてよ」
探偵
「それは、ちょっと難しいから、また明日にしようか!
今日はちゃんとケーキの分数と食塩水の分数をマスターするように!」
ソント君
「は~い」
コメント
車の続きが読みたいです!
承知しました。
作成しますので、少々お待ちくださいませ。
これ、数が少ないから感覚で分かりそうなだけに、逆に混乱するんですよね
そう言う意味では外れドアを消してくれる問題に似てる